歯が命の日 8月1日

「歯が命の日」記念 エナメル質へミネラル補給 ~生涯健康な歯のための予防歯科最前線~

サンギは、2016年7月2日(土)に行われた日本経済新聞主催のシンポジウムに協賛いたしました。予防歯科の大切さ、一生を自分の歯で健康・元気に過ごすために今からできることについて、大学教授や歯科医師が講演しました。

講演 1

健康寿命を延ばす、口腔ケアの重要性

神原正樹氏 (大阪歯科大学 名誉教授)

日本の最新の国勢調査では65歳以上の方が全人口の1/4を超えたそうです。世界で最も早く超高齢化社会を迎えた日本が、この問題にどのように対応していくかは、世界が注視している人類の課題です。

 

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実は日本の生命寿命と健康寿命には10年程の乖離があるのが現状です。これは最後の10年に介護を必要とするということを意味しています。最近やっと、歯を残せば残すほど寿命が延びること、口腔の健康と全身の健康との関連性を示すエビデンスも得られています。例えば、歯ぐきが炎症を起こし出血があると、口の中の細菌が血管に入り、全身の不調の起因になりえます。健康寿命を延ばし、最後まで豊かな人生を送るために、口腔衛生は欠かせません。

近年、口腔衛生の法整備が進んでおりますが、全身の健康を考える上でも、私は歯科での予防に関して国民健康保険を適用していただきたいと考えています。病気になる前に予防し、予測の上で発症前に介入する先制医療の考え方です。このように胎生期から終生にわたるヘルスケアを推進し、治療から予防へのパラダイムシフトを行うことは、少子高齢社会には大変重要です。

一生自分の歯で食事ができ、健康な生活を送ることが健康寿命を延伸します。これは医療費の削減を含め社会全体を健康に保つことにつながります。まずは口を綺麗にする毎日の清掃法を習得し、フッ化物と、今回のテーマのミネラル補給によるお口のケアからはじめていただきたいです。

講演 2

エナメル質を修復するむし歯予防成分

大橋たみえ氏 (朝日大学 准教授)

歯の外側のエナメル質の特徴は、ハイドロキシアパタイト約97%でできており、他に有機質・水が含まれています。体の中で一番硬く、硬さを表すモース硬度10段階のうち約7で、鉄のモース硬度が約5ですのでその硬さがお解りいただけるかと思います。その下の象牙質はハイドロキシアパタイトが約70%で、水分が約30%。モース硬度約5~6で骨と同じ程度の固さです。

みなさんは「歯は一度生えたら構造は変わらない、変えられない」と思っていませんか?実はエナメル質の表面ではミネラルの交換が常に行われており、いわゆる代謝が起こっています。これには唾液が深く関係しています。唾液中のミネラルが歯に取り込まれることを「再石灰化」、ミネラルが歯から溶け出して唾液側に移動することを「脱灰」といい、効率的に再石灰化が進めば、エナメル質の構造は安定し、酸に強い歯になります。

再石灰化は、細菌などの塊であるプラーク(歯垢)が歯の表面についていると阻害されてしまいます。むし歯の原因となる菌は、人の食べ物の糖分を代謝して「酸」を生成します。この時点で酸は弱い酸性ですが、プラークの中で滞ると歯を溶かす強さになるため、まずはプラークを取り除くことが大切です。

さらに、食事や免疫機能の低下などで日々変化するお口の環境を整え、再石灰化を進めるためには、歯への直接のミネラル補給で再石灰化をする「薬用ハイドロキシアパタイト」や、唾液中からのミネラルによる再石灰化を促進する「フッ素」を歯みがき剤で届けるのが効果的です。

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私の研究室ではハイドロキシアパタイトの再石灰化に関する二つの研究を行いました。一つは、ヒトの抜去歯に人工的な初期むし歯を作り、人工唾液に浸した場合とハイドロキシアパタイト溶液に浸した場合を比較したもので、後者の方が再石灰化が進んでいることがわかりました。

もう一つは、小学生の児童に対し、ハイドロキシアパタイト配合歯みがき剤とプラセボ歯みがき剤を毎日給食後に使用してもらい、3年間の追跡調査をしたもので、ハイドロキシアパタイト配合歯みがきにむし歯予防効果があることが解りました。

現在、他の先生方も多くの薬用ハイドロキシアパタイトに関する研究、効果を報告されています。

講演 3

歯のケアはミネラル補給へ~予防歯科最前線!~

加藤 正治氏 (高輪歯科 院長)

みなさんはご自身の歯が何本あるかご存じでしょうか?

予防歯科先進国と言われるスウェーデンでは、80歳で平均約21本の歯が残っているいます。一方、日本では平均約14本です。この違いはどこからくるのでしょうか。スウェーデンでは20歳以上の定期予防検診受診率は80%以上であるのに対し、日本では30%未満といわれています。つまり、むし歯や歯周病になってから歯科医院に行くのではなく、悪くならないように定期的に予防目的で受診し、適切なケアを行う習慣が健康な歯の維持に大きく影響していることは間違いありません。

私のクリニックで8020を達成している方には、いくつかの共通点があります。その最大のポイントは、健康なエナメル質に守られた天然歯を維持しているということです。では徐々に失われるエナメル質を残し、歯を常に健康な状態に導くにはどのようにケアをすればよいのでしょうか。

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食事のたびにエナメル質から失われるミネラルは、本来、唾液の力で再石灰化として歯に補給されます。しかし、この再石灰化のバランスがくずれるとミネラルが徐々に失われていきます。エナメル質を失う原因として代表的なものはむし歯です。いわゆる黒くなるむし歯の一歩手前の状態の「初期むし歯」と呼ばれる白い色の 状態であれば、削らずにミネラルを補給することで治せる可能性があります。また、加齢や薬の影響で唾液が出にくくなった場合にも歯の主成分「ハイドロキシアパタイ ト」などを使ってミネラル補給をします。このような 歯の結晶成分を補給するケアを「ミネラルチャージ」と呼んでいます。

歯の状態は人によって異なりますので、まずは歯科医院に行って、自分の弱点を知ることが重要です。今の予防は、唾液の検査など科学的な分析の結果に基づき取り組んでいきます。 「何歳までに何本残すか」、歯のケアは明確な目標が立てやすいため、長期的な・計画的な取り 組みが可能です。

私のクリニックの一例ですが、65 歳から 80 歳まで毎月 1 回の定期予防受診を行っている方が、こ の 15 年間で失った歯は 0 本です。できるだけ予防のスタートラインを早め、目標設定をす ること、歯科医院でのプロケアと家庭でのセルフケアをバランスよく行うことで、天然歯を維持してい ただければと思います。